2020年から世界的な混乱に陥っている新型コロナウイルス感染症の流行。海外の国ではロックダウン(都市封鎖)という強硬策を講じたところもありましたが、日本ではあくまでも自粛を求めるというスタンスをとり、政府から国民に対して協力を求める形となりました。
自宅にいる時間が増えたことで時間を持て余す人も増加し、リアルな世界ではなくインターネットを通して人との交流を図る機会が増えました。それに伴い大きな社会問題となっているのがネットトラブルの増加です。なぜコロナ禍でネットトラブルが増えたのか、実際に発生したトラブルの一例を紹介するとともに、巻き込まれた際の正しい対処方法もあわせて解説しましょう。
コロナ禍で発生したネットトラブルの一例
はじめに、コロナ禍によってどのようなネットトラブルが発生したのか、さまざまなメディアでも取り上げられた典型的な例をいくつか紹介しましょう。
他県ナンバーの車をネット上に公開
緊急事態宣言が発令され自宅待機が求められるなか、他県のナンバープレートの車をスマートフォンで撮影し、それをネット上にアップロードするという事例が見られました。ナンバープレートだけでなく車種も容易に特定できるような画像も多く流出し、車のオーナーを非難するような言葉も添えられていたケースも少なくありません。
しかし、他県ナンバーだからといって県外在住者とは限らず、なかには以前の住所で車を購入し地元に引っ越してきたケースもあるでしょう。「他県ナンバー=自粛せず外出している人」という風潮が広まったことにより、車に傷をつけられたりするなどの実害が発生したケースもありました。
自粛期間中に営業しているパチンコ店への非難
緊急事態宣言の発令によって一時的な休業を強いられた店舗も多く、パチンコ店も例外ではありませんでした。しかし、政府や自治体はあくまでも自粛の要請といったスタンスであったため、営業を強行する店舗も存在していたのです。
そのような店舗をターゲットに、一部のユーチューバーやネットユーザーは抗議の声を挙げ、その様子をインターネット上にアップロードするケースもありました。
店舗が容易に特定できることはもちろん、店舗で働くスタッフや来店客の顔も判別できる状態であったことから、プライバシーの面からも懸念する声が上がりました。
感染者が発生した企業や店舗の実名公開
クラスターが発生した企業や団体、店舗などの実名がネット上で公開され、一部のユーザーによって拡散されるケースもありました。企業のなかには、感染者やクラスターが発生した時点で自ら公表するところもありましたが、ほとんどはメディアでの実名は非公開となっていたのです。
しかし、ネット上での噂や口コミが独り歩きしてしまい、なかにはまったく関係のない企業名や店舗名が取り上げられ風評被害につながったケースも。一度拡散した内容は正しい情報に訂正することが難しく、多くのユーザーに誤った内容が認識されることとなりました。
コロナ禍でネットトラブルが増加している理由
コロナ禍という困難を抱えているときに、なぜここまで多くのネットトラブルが頻発するのでしょうか。その背景を探ってみると、さまざまな理由が見えてきます。
自宅で過ごす時間が増えた
第一に直接的な要因として考えられるのは、単純に外に出る機会が減り自宅で過ごす時間が増えたことが挙げられます。通常、自宅で過ごす場合にはテレビを見たり読書をしたりと、さまざまな方法がありますが、あまりにも自宅待機の期間が長いとインターネットに触れる機会も増加します。
これまでは閲覧していなかったWebサイトやSNS、動画サイトのチャンネルなども目にする機会が増え、それまで自分自身が知らなかった情報に触れるユーザーが増加。その結果、さらにインターネットにのめり込み、自分とは考えの異なる意見をもったユーザーに対して誹謗中傷をする傾向が高まるのです。
ストレスを発散する機会の減少
普段の生活では、仕事や私生活でさまざまなストレスを抱えていても、外に出て散歩やスポーツをしたり、友人と食事を楽しんだりして発散できます。しかし、コロナ禍では不要不急の外出自粛が求められていたこともあり、ストレスを発散する機会が大幅に減少。
インターネット空間のなかで歪んだ正義感を盾に、自分とは意見の合わない人を攻撃し傷つけるケースも少なくありません。
コロナ禍という社会不安
コロナ禍は2020年に拡大して以降、2022年時点でも収束の目処がたっていません。出口が見えないからこそ社会不安も増大し、それが人々の心理的負荷を高めているともいえるでしょう。
たとえば、上記で紹介した他県ナンバーの車や自粛を破った店舗の実名を公開するという行為も、根本には「コロナ禍を収束させるために努力しているのに、それを無駄にする行為」と映っていることが考えられます。コロナ禍という社会不安が個人の心理状態にも影響し、攻撃的になりやすい傾向に拍車をかけていると捉えることもできるでしょう。
インターネット上には極端な意見が集まりやすい
インターネットでは個人の意見を能動的に発信する必要があるため、極端な意見や価値観が集まりやすい傾向があります。そのような情報に触れていると、あたかもそれが世間一般の意見や価値観であると認識してしまい、先鋭化する傾向があるのです。
コロナ禍の不安と、長引く外出自粛でストレスが増えた環境で、SNSや動画サイトで他者の意見に触れることが増えたため、自分と意見の異なる他者に対し攻撃的になり、誹謗中傷も増えた。
コロナ禍に関連するネットトラブルに巻き込まれたら
今回紹介したネットトラブルはあくまでも一例であり、これ以外にもさまざまなトラブル・嫌がらせが横行しています。もし、自分自身がいわれのない誹謗中傷を受けてしまった場合、どのような対処を講じれば良いのでしょうか。
相談窓口への連絡
たとえば、総務省では「STOP!コロナ差別」を掲げ、人権相談窓口を開設しています。インターネットの相談フォームまたは電話からの相談を受け付けているため、そちらに相談してみるのも良いでしょう。また、コロナ禍を起因とした内容にかかわらず、誹謗中傷被害に悩む個人や企業に対しては、「誹謗中傷ホットライン」という窓口もあります。
誹謗中傷・風評被害対策を専門に扱う事業者への相談
インターネット上に書き込まれた内容については、個人で削除依頼の手続きを行うのは難しいものです。そこで、個人・企業を問わず誹謗中傷や風評被害対策を専門に扱っている事業者へ相談してみるのも有効な対策です。
サイト運営者に対して削除依頼を出すことも可能なほか、ネガティブな情報が検索候補上位に上がってこないようにする「逆SEO」などの対策も可能です。
誹謗中傷への罰則強化の流れが加速
コロナ禍もひとつの要因となり、誹謗中傷が大きな社会問題へ発展しています。このような流れを受け、国でもネット上を中心とした誹謗中傷に対して法律を改正し厳罰化を進めています。個人はもちろん、企業や店舗においても正しい対策を講じ、誹謗中傷による被害を食い止めていきましょう。
今回は、コロナ禍がひとつの要因となり、誹謗中傷が大きな社会問題へ発展していく原因や対処法をご紹介しました。「誹謗中傷対策にスクリーンショットが有効な理由とは?相談先も紹介」では実際に誹謗中傷された場合の対処法やその内容ごとの相談先を紹介しています。是非ご覧ください。