テレビや新聞では毎日のようにさまざまなニュースが流れていますが、なかにはご近所トラブルが原因で凶悪な事件に発展するケースも少なくありません。
また、近年ではインターネットユーザーが増えていることもあり、本来であれば限られた地域やエリアでしか広まらなかったことも、一瞬のうちにSNSなどで拡散されるリスクもあります。
発端は些細な苦情やクレームであったとしても、一歩対応を間違えてしまうと重大なご近所トラブルに発展し、さらには深刻な事態を引き起こすことも考えられます。
本記事では、ご近所トラブルが発生した場合にどういった対処をとるべきなのか、トラブルを予防するためのポイントも含めて詳しく解説します。
ご近所トラブルで多い事例
一口にご近所トラブルといっても、さまざまなパターンがあります。どのような事例が多いのか、参考としていくつか紹介しましょう。
騒音に関するトラブル
ご近所トラブルで特に多いのが、騒音に関するトラブルです。たとえばテレビやオーディオの音量、足音、ドアの開閉音、洗濯機や掃除機などの動作音、子どもの泣き声など、騒音トラブルの要因にはさまざまなものがあります。
足音やドアの開閉音、家電製品の動作音などは、日中の時間帯であれば気にならないこともあるでしょう。しかし、多くの人が寝静まった夜間では、日中以上に建物内に音が響きやすく、苦情につながることがあります。
トラブルの原因になる音
- テレビやオーディオの音量
- 足音
- ドアの開閉音
- 洗濯機や掃除機などの動作音
- 子どもの泣き声
夜まで残業をして帰宅が深夜になると、日中に家事ができないため、やむを得ず夜に洗濯機や掃除機を稼働させる人もいるでしょう。ただ近隣住民は寝静まっている時間であることを忘れてはいけません。
住民の生活リズムが合わないと騒音トラブルに発展しやすい傾向があります。
ニオイ・悪臭に関するトラブル
不快なニオイや悪臭が原因でご近所トラブルに発展することも少なくありません。
特に多いのが、犬や猫といったペットが原因で生じる悪臭です。定期的に排泄物の処理を行っていないと、部屋に悪臭が充満し、さらに時間が経つと上階や下階、両隣の部屋など、近隣にまで悪臭がおよぶことがあります。特に複数のペットを飼育している多頭飼いの現場では、飼い主が世話をできなくなり、悪臭騒動に発展しているケースも少なくありません。
また、ペット以外にもゴミの処分ができず部屋に溜まっていき、ゴミ屋敷と化す事例もあります。生ゴミや食べ終わった弁当の空容器などを放置しておくと腐敗が進み、強烈な悪臭を発します。住民本人だけでは対応できないほどゴミが山積し、近隣一帯にまで悪臭がおよぶケースもあります。
トラブルの原因になるにおい
- ペットの排泄物
- 生ゴミや不要物
自分は気にならないからと、ペットの排泄物やゴミを放置していると、トラブルの原因になってしまします。
建物の境界・敷地に関するトラブル
一戸建て住宅に多いのが、境界線や敷地の所有権に関する問題・トラブルです。
本来、建物や土地の境界は明確に決まっており、地権者の許可なく勝手に使用したり、敷地内に侵入したりすることは違法となります。しかし、そもそも敷地の境界線が曖昧であったり、自分の土地だと勘違いしていたりする住民も存在します。
お互いの認識に相違があったり、「これくらい問題ないだろう」といった思い込みが思わぬトラブルを招くこともあります。
トラブルの原因
- 所有権の認識違いや誤解
- 「これくらいならいいだろう」という甘え
「なんとなく」や「これくらいなら」という曖昧な認識や甘えがトラブルの原因になります。
ゴミの出し方や散乱によるトラブル
地域や自治体によってもゴミの出し方は異なり、特に引っ越してきたばかりの頃は戸惑う方が多いでしょう。
各地域のルールを認識しないままゴミを出してしまったり、面倒だからといって正しい分別をしないままゴミを出したりすると、ゴミは回収されず、その場に残されてしまいます。
本来、自分の出したゴミが回収されない時は、必ず自分で引き取らなければいけません。もしゴミをそのままにしておくと、近隣住民だけでなく同じ自治会に所属する住民から苦情が寄せられることがあります。
特にゴミ捨て場やゴミステーションの近くに住んでいる住民は、悪臭やカラスによるゴミの散乱などの深刻な被害を直接受けるため、トラブルが大きくなりがちです。
トラブルの原因
- ゴミ捨てのルールを知らない、守らない
- 回収されなかったゴミをそのままにしておく
自分が捨てたゴミのせいで近隣住民が被害を受けている可能性があります。
ご近所トラブルが発端となって深刻化することも
このようなご近所トラブルは、些細なことがきっかけであっても、解決の糸口がみつからず長期化してしまうと深刻な問題に発展することもあります。どういった事態に発展する可能性があるのか、いくつかのケースに分けて解説しましょう。
近隣住民との人間関係の悪化
ご近所トラブルが発生すると、はじめのうちは苦情やクレームをやんわりと伝える程度であっても、徐々に双方が対立し激しい口論や喧嘩を引き起こすことがあります。
あまりにも感情的になりすぎると冷静なコミュニケーションが難しくなり、お互い引くに引けない状況にまで発展するケースが少なくありません。それまで良好な人間関係を維持できていたのに、些細なことが原因で深刻な対立を生み出し、深い溝を生じさせてしまいます。
また、このような事態にまで発展すると、当事者同士だけでなく周囲の住民にも嫌な思いをさせてしまい、地域やコミュニティのなかで孤立した状態を招く可能性もあるでしょう。
物的被害
人間関係の悪化だけにとどまらず、物的被害を受ける可能性もあります。たとえば自宅の窓を割られたり、車に傷をつけられたりするのは典型的な事例として挙げられるでしょう。
このような物的被害を受けた場合、相手に対して報復しようと考える人も多く、そこから互いに報復を繰り返す負の連鎖に陥っていくことが少なくありません。
また、自宅や車などの被害だけにとどまらず、さらにエスカレートしていくとペットや家族にも何らかの危害がおよぶことも十分考えられます。
誹謗中傷被害
物理的に危害を加えたり、モノを破損したりといったことはなくても、誹謗中傷の被害に遭うケースもあります。
たとえば、相手に非があるにもかかわらず事実とは正反対の主張をして自分だけが悪者にされたり、根拠のない噂や悪評を地域内で広められたりといった被害が考えられます。
また、昨今ではインターネットユーザーが増えたことから、SNSや掲示板などに名指しで中傷する内容を書き込まれるケースも増えています。インターネットは拡散力が高いため、それが事実ではなくても瞬時に不特定多数のユーザーへ拡散され、収拾がつかなくなる可能性もあるでしょう。
精神的ダメージ・精神疾患
ご近所トラブルが解決せず長期化するほど、当事者が抱える精神的ストレスは増大していきます。
その結果、うつ病や不眠症などの精神疾患をもたらし、長期に渡る治療が必要になることもあるのです。仕事や私生活が充実していた人であっても、ほんの些細なことが引き金となり社会生活を送ることさえ困難になる可能性は決してゼロではありません。
- 地域のコミュニティからの孤立
- 家や車、家族などへの危害
- インターネット上での誹謗中傷の拡散
- うつ病や不眠症などの精神疾患の発症
ご近所トラブルの正しい対処法とは
自分自身に悪意がなかったとしても、思わぬことがきっかけでご近所トラブルを招くことがあります。自分がトラブルの原因となった場合にしろ、身に覚えのないクレームや苦情を受けた場合にしろ、上記で紹介したような問題の深刻化を防ぐためには、正しい対処法を覚えておくことが大切です。
特に重要な3つのポイントをもとに解説しましょう。
感情的にならず冷静に話し合う
大前提として重要なのは、感情的になることなく冷静に話し合うよう心がけることです。
たとえ相手に非がある場合でも、自分自身の主張や考えだけを一方的にまくし立てるように話してしまうと、相手も感情的になり解決の糸口を見失ってしまいます。
もし、相手が興奮しているようであれば、まずは自分の主張を抑え、相手の話を冷静に聞くことに徹しましょう。多くの場合、興奮している人も自分自身の主張や考えを吐き出すことができれば多少落ち着きを取り戻すことができます。
心情的に相手のことが許せなかったとしても、できるだけ早期に問題を解決するためには、感情をむき出しにしたり相手を煽ったりするような行為は慎むべきです。
第三者へ相談する
当事者同士で話し合ったとしても、お互いの主張が平行線のまま解決の糸口が見えないケースも多いものです。
そのような場合には、第三者へ相談してみることもおすすめです。たとえば、一戸建ての住民同士のトラブルであれば自治会の会長やリーダー的存在の人、集合住宅であれば管理会社や大家さんなどが良いでしょう。
ただし、場合によっては当事者間で直接話し合う前に、第三者へ苦情を訴えたほうが良い場合もあります。たとえば、賃貸住宅の場合には入居者の出入りも多いため、隣にどんな人が住んでいるか分からないケースも少なくありません。分譲マンションでもこのような状況は想定されるため、安全かつ早期に問題を解決するためにも建物を管理している第三者から話してもらったほうが良いでしょう。
法的手続きを考える
第三者を通してやり取りを行っても、相手が自分の主張を通すばかりで解決の糸口が見えず、トラブルが長期化することもあるでしょう。そのような場合には、最終的な手段として法的手続きを行うことも検討すべきです。
基本的に警察は民事不介入のため、すべてのご近所トラブルに対応できるとは限りません。しかし、物的被害や誹謗中傷の被害などの実害が発生した場合には、警察に被害届を出すことで解決できる可能性が高まります。
また、仮に警察で対応できない案件であったとしても、弁護士へ相談することで損害賠償請求や慰謝料請求を含め法的に解決できる場合もあるでしょう。
- 相手の話を冷静に聞く
- 自治会長や管理会社など、第三者へ相談する
- 弁護士に相談し、法的に解決する
ご近所トラブルを招かないためのポイント
近隣住民と良好な関係を築き平穏な暮らしを維持するためにも、ご近所トラブルは極力避けたいものです。そのためには、日々の暮らしのなかでどういった点に注意すべきなのでしょうか。
密なコミュニケーションを心がける
まずは普段から近隣住民と密なコミュニケーションを心がけることが大切です。出勤途中やゴミ出し、散歩のときなどにすれ違ったら率先して挨拶を交わしたり、引っ越してきた直後はお家へ訪問し挨拶をしておくと良いでしょう。
特に子どもがいる家庭やペットを飼っている場合には、「子ども(ペット)がいるため十分注意しますが、もし騒音など気になることがありましたら教えてください」など、あらかじめ一言伝えておくだけでもトラブル防止につながります。
近隣住民がどんな人なのかわかっていれば、トラブルをスピーディーに解決できるでしょう。
生活習慣を見直す
騒音やニオイなどが原因で発生するご近所トラブルを防ぐためには、生活習慣を見直すことも大切です。
たとえば、夜間に洗濯機や掃除機をかけなければならない場合には、平日に家事をするのではなく、休日の昼間にまとめて洗濯物を洗うなど、時間を変えることも有効です。もし、どうしても平日の深夜に洗濯をしなければならない場合には、コインランドリーを利用することなどもひとつの配慮です。
また、悪臭を防ぐためには、こまめにゴミ出しをして部屋に溜め込まないことや、ペットの排泄物も最低1日1回は処理することを心がけましょう。
時間を変える、こまめに捨てるなど、小さな工夫で大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
インターネットで拡散されたらどうする?
ご近所トラブルと聞くと、あまり深刻にとらえる方は少ないかもしれません。しかし、相手に非があると決めつけたり、相手を挑発したり煽ったりするような言動をとってしまうと、物的被害や誹謗中傷といった事態にまで発展することがあります。
特に注意したいのは、インターネットによって誹謗中傷の被害が拡大した場合です。顔写真や氏名、住所などの個人情報までもが拡散されてしまうと、相手の一方的な主張によって自分自身が悪者に仕立てあげられてしまいます。その結果、本来無関係の第三者から脅迫や嫌がらせの被害を受けることも想定されるでしょう。
このような事態にまで陥ると、自分ひとりの力では対処できなくなるため、警察や弁護士などの専門家を頼ることが大切です。それと同時に、インターネットでこれ以上のデマが拡散されないよう適切な対応をとる必要があります。
ネット上の風評被害や誹謗中傷対策を専門に扱っている業者もあるため、そのようなところに相談・依頼をすることでスピーディーに対処してくれます。