Google Mapには口コミ機能があり、企業や店舗を利用したユーザーからの評判や感想が掲載されています。ユーザーの立場から見れば、客観的な意見をもとにお店選びの参考にできるほか、企業や店舗から見ても自社のことを宣伝してもらえるツールにもなります。
しかし一方で、寄せられる口コミがポジティブなものとは限らず、自社の評判を下げる悪質な書き込みも存在します。なかには経営者や従業員個人を名指しで攻撃するような書き込みもあり、これを放置しておくと深刻な問題に発展することもあります。
もし、Google Mapの口コミで自社の従業員個人の氏名が掲載された場合、企業としてどういった対応を取るべきなのでしょうか。
Google Map口コミへの個人名書き込みは違法性を問えるのか?
Google Mapには口コミ機能があり、Googleアカウントをもっていれば誰もが自由に書き込むことができます。たとえば飲食店や美容室、マッサージ店などを利用したことのあるユーザーから感想や意見が書き込まれているケースも多く見られます。
しかし、なかには経営者や従業員個人に向けた心ない書き込みがなされることも多く、攻撃的な内容を目にしたときに精神的なダメージを受けることも。従業員の早期離職を防ぐためにも、このような書き込みは削除したいと考える経営者も多いことでしょう。
同時に、「そもそも個人名を書き込むこと自体、違法性を問えないのか?」と疑問に感じる方も多いはずです。結論からいえば、個人名を書き込んだとしても、すべてのケースにおいて違法性が認められるとは限りません。
では、違法性が問える書き込みと問えない書き込みには、どういったケースが想定されるのでしょうか。それぞれのパターンに分けて例を紹介します。
違法性が問える可能性の高い書き込みの例
違法性が問える書き込みとしては、以下のような内容が考えられます。
- 「◯◯という従業員は◯◯さんと不倫をしている」
- 「◯◯という従業員は過去に逮捕歴がある」
- 「◯◯という従業員は元暴力団員である」
- 「このお店で財布を盗まれた。◯◯という従業員が怪しい」
上記で挙げたような不倫や逮捕歴、元暴力団員であるということが事実の場合でも、インターネット上で個人名とともに書き込む行為は名誉毀損や侮辱罪にあたる可能性があります。
また、盗難被害に遭ったからといって明確な証拠もなく「◯◯さんが怪しい」などと書き込む行為も名誉毀損にあたり、違法性を問える可能性は高いといえるでしょう。
違法性が問えない可能性の高い書き込みの例
上記とは反対に、違法性を問うことが難しい書き込みとしては、以下のような内容が考えられます。
- 「◯◯という人に接客してもらったが、言葉遣いが乱暴で残念な気持ちになった」
- 「◯◯という従業員の説明が分かりにくかった」
- 「業務中であるにもかかわらず、◯◯という従業員と◯◯という従業員が私語をしていて対応してくれなかった」
上記で挙げたような内容は、いずれも正当な苦情やクレームの例であり、個人名は出しているものの名誉毀損や侮辱罪などにあたる可能性は低いでしょう。ただし、あくまでも事実に基づく主張・意見であることが大前提となります。
たとえば、ある従業員に対して個人的な恨みを抱いているからといって、苦情やクレームを入れて陥れようとする行為は違法性が問われる可能性があります。
内容が事実であったとしても、従業員個人に対する危害が予想される極端に強い言葉や攻撃的な内容が書き込まれていると、脅迫などの違法行為として訴えることもできます。
Googleのガイドラインでは個人情報の投稿は禁止されている
上記はあくまでも法律的な観点でのお話ですが、Google Mapを運営しているGoogle社ではどのようなガイドラインとなっているのでしょうか。
結論からいえば、当事者の同意なく投稿された個人情報は不適切なコンテンツとみなされ、禁止されています。Google社が指す個人情報とは、顔写真や住所、連絡先などはもちろん、個人の氏名も含まれます。
法律上、苗字または名前だけのように、それだけでは個人を特定できない情報は個人情報に含まれませんが、Google社では苗字または名前のみも個人情報として取り扱い、Google Mapの口コミを含む投稿を禁止しています。
Google Map口コミへ個人名が書き込まれた場合の影響
違法性があるかどうかにかかわらず、Google Mapに個人の名前が書き込まれてしまうと、ショックを受け立ち直るのに時間を要する方も少なくありません。個人に与える影響はもちろんですが、企業や店舗に対してもさまざまな悪影響が考えられます。
- 従業員の早期退職
- 悪評の拡大による経営悪化
- 採用力の低下
それぞれ見ていきましょう。
従業員の早期退職
真っ先に考えられるのが、従業員の早期退職です。名指しでクレームや苦情を受けると、誰しもが恐怖や不安を感じるものです。特にインターネット上で匿名による口コミを目にしてしまうと、相手の顔が見えないことからさらに恐怖心は増大します。
店舗で対面によってクレームや苦情を受けるのと比べ、Google Mapのようなインターネット上に寄せられる内容は攻撃的になりやすく、従業員が受ける精神的ダメージは計り知れません。
経営者や上司から適切なケア・対策をしてもらえないと、恐怖心や精神的な傷が癒やされず、従業員は働き続けることが困難になるケースもあるでしょう。その結果、早期退職に至り企業や店舗としても人手不足が深刻化することになります。
悪評の拡大による経営悪化
Google Mapへネガティブな口コミがあった際、適切な対応を怠ってしまうとさらに悪評が拡大し、その企業やお店を知らないユーザーにもネガティブな印象を与えてしまいます。たとえば、会社や自宅の近隣で飲食店を探す際、低評価の口コミが多いお店と高評価の口コミが多いお店があった場合、多くのユーザーは後者を選ぶはずです。
しかし、そこに書かれている口コミがいずれも事実ではなく、悪質な嫌がらせや愉快犯によるものであった場合、本来は良いお店であるにもかかわらず新規の来店数が減少し経営に影響を及ぼす可能性があるのです。
採用力の低下
Google Mapの口コミを参考にしているのは顧客やユーザーだけではありません。たとえば、就職や転職を検討している方の多くは、候補先企業の実態を把握するためにホームページなども参考にします。このとき、検索結果にGoogle Mapの口コミも表示されることがあり、ネガティブな口コミが多いと「社員教育が十分ではないブラック企業なのではないか?」といった印象を抱いてしまう求職者もいるでしょう。
その結果、求人情報を公開してもなかなかエントリーが集まらなかったり、自社が求める優秀な人材が集まらなかったりと、採用力の低下を招くおそれもあります。
Google Map口コミは削除できる?具体的な方法とは
では、実際にGoogle Mapの口コミへ個人名が投稿された場合、削除することは可能なのでしょうか。
結論からいえば、投稿内容に個人名を含む個人情報が記載されていた場合、Google社では不適切なコンテンツとして検出し削除します。そのため、原則的には企業や店舗側で対応しなくとも、従業員の個人情報がインターネット上に残るといった懸念はありません。
注意ポイント
前述のとおり、不適切なコンテンツに関してはGoogle側が原則削除するシステムになっておりますが、以下の場合は削除されずにそのまま残ってしまう場合があります。
①タイムラグが発生する場合
口コミが投稿されてからGoogle側で削除をする過程においてはタイムラグが生じ、一定期間にわたってその内容が残ってしまうことがあります。
②Googleが認識できない場合
何らかの理由によってGoogle側が個人名を識別できず、削除されないケースもあるでしょう。そのような場合には、Google社へ直接不適切なコンテンツであることを報告し、コメントの削除を求めることもできます。不適切コンテンツの報告は以下の手順で実行します。
- Google Mapを開く
- 名前または住所から自社を検索
- 左側のパネルから「クチコミの概要」を表示
- 「◯件のクチコミ」を選択
- 旗のアイコンをクリック
- 削除依頼の旨とその理由をフォームに記入・送信
上記の方法は個人情報の投稿だけでなく、虚偽の口コミやお店への嫌がらせ、脅迫などに該当する悪質な書き込みを削除する際にも有効です。ただし、すべてのケースが削除対象になるとは限らず、Google社の判断によっては該当の口コミが残った状態になることもあります。
従業員を守るために企業・店舗ができること
ここまで紹介してきたように、Google Mapに個人名を含む悪質な書き込みがなされると、従業員の退職を招くだけでなく経営そのものにも大きな影響をおよぼすことがあります。経営が悪化すると企業や店舗の閉業に追い込まれる可能性もゼロではなく、経営者はもちろん従業員の生活が立ち行かなくなるリスクも考えられます。
では、このような事態を防ぐために、企業や店舗はどのようにして従業員を守っていけば良いのでしょうか。悪質な口コミに対する正しい対処法や、企業・店舗としてできることをいくつか紹介しましょう。
従業員に向けた教育を行う
クレームや苦情の数が多い場合には、自社の従業員の対応に問題があるケースも少なくありません。ネガティブな口コミがすべて自社に対する嫌がらせや誹謗中傷であると安易に断定するのではなく、そのような口コミが寄せられないよう従業員教育を徹底することが何よりも大切です。
また、慢性的に人手が不足していると従業員にも余裕がなくなり、適切な対応がとれなくなることもあります。従業員一人あたりの業務負担が適切なものであるか、長時間労働に陥っていないかなどを考慮し、必要に応じてスタッフを増員するなどの対策も求められます。
クレームや苦情は真摯に受け止める
寄せられた口コミが正当なクレームや苦情であるにもかかわらず、企業や店舗が虚偽の内容であると断定してしまうと、さらなる炎上に発展する可能性もあります。そのため、まずはその口コミが事実であるかを分析し、もし事実であれば真摯に受け止め改善していくことが求められます。
そのうえで、寄せられたコメントに対し謝罪や今後の改善策などを返信するなど、丁寧な対応を心がけましょう。
悪質な口コミには毅然とした対応をとる
もし、口コミのなかに事実ではない虚偽の内容が含まれていた場合には、毅然とした対応をとることが重要です。
たとえば、「◯◯という従業員は過去に逮捕歴がある」といったような事実とは異なる書き込みに対しては、事実無根であることを明確にしたうえで、速やかに書き込みを削除してもらうよう警告しましょう。
法的措置に踏み切る
特に悪質な口コミや、何度警告しても繰り返し不当なクレームを書き込むようなユーザーがいた場合には、最終手段として法的措置に踏み切ることも検討しましょう。
通常、アカウント名だけでは私たちが個人を特定することはできませんが、所定の手続きを経ることでIPアドレスの開示請求が可能であり、投稿者が利用したプロバイダを特定のうえ契約者情報の開示請求をすることもできます。
ネット風評被害対策専門のリスタートにお任せください
今回紹介してきたような、インターネット上の風評被害や誹謗中傷、個人情報の公開などに悩んでいる場合には、専門会社へ相談してみることもおすすめです。悪質な書き込みに対する具体的な対策方法や予防法を提示できるほか、弁護士と連携し法的措置に踏み切る際のサポートも可能です。
インターネット上の書き込みだからといって放置していると、それを見た一般のユーザーが事実であると誤認するケースもあります。従業員を守り、企業や店舗の悪評を拡大させないためにも毅然とした対応を心がけましょう。
Googleマップでの風評被害にお困りの方は是非リスタートにご相談ください。相談料は無料です。