情報収集や友人・知人とのコミュニケーションツールとしても不可欠な存在となったSNS。便利で有益な使い方ができる一方で、SNSで不特定多数のユーザーから誹謗中傷の被害を受けるケースもあり社会問題化しています。
特に気をつけたいのが、自分自身は誹謗中傷の意図がないにもかかわらず、使い方次第で加害者になってしまうことです。どういう使い方をした場合に誹謗中傷へ加担することになってしまうのか、それを防ぐために注意すべきポイントもあわせて解説します。
誹謗中傷の定義をおさらい
誹謗中傷の「誹謗」とは、自分自身以外の誰かの悪口を言ったりネガティブな言動をとったりすることを指し、「中傷」とは事実とは異なる内容を流布して他人の名誉を傷つけることを指します。すなわち、一般的な悪口や事実無根の風評などは誹謗中傷にあたることになります。
インターネットの普及によって誰もが手軽に情報を発信できるようになった現在、誹謗中傷は社会問題化しており、誹謗中傷を受けた本人が自殺に追い込まれるケースも相次いでいます。インターネットにおける誹謗中傷は、加害者側の匿名性が担保されていることから過熱しやすい傾向にあります。ただ、SNSは一定の匿名性はあるものの、情報の開示請求が行われれば記入者が特定されることを肝に銘じておくべきです。
誹謗中傷をする側の心理としては、「相手側が犯した不正を暴くためにやった」、「相手のことが許せなかった」など、歪んだ正義感や怨恨が動機となっているケースが少なくありません。しかし、たとえ相手側に非があったり、疑いの目が向けられたりしていても、誹謗中傷が認められる理由にはなりません。自分が発信する内容には最後まで責任を負うことが重要です。
「誹謗中傷とは?」に関しては「誹謗中傷にあたるのはどこから?具体例と合わせて分かりやすく解説」のコラムで詳しく解説しております。
SNSにおける「いいね」や「リツイート」の役割
匿名で手軽に情報が発信できるSNSは、インターネット上における誹謗中傷の温床になりやすい傾向が見られます。
SNSは自分自身の意見や考えを短い文章で投稿できる機能だけでなく、ほかのユーザーが発信した内容に対して「いいね」や「リツイート」といった形で反応できる機能もあります。一般的に、「いいね」はその投稿内容に対して肯定的な反応を示し、「リツイート」はその投稿内容を自分以外の多くの人に共有したい場合などに用いられる傾向があります。
ただ、SNSでは膨大な情報がタイムライン上に流れてくるため、後になって再びその投稿内容を閲覧したくても見つけられなくなることもあります。そこで気になった投稿に対して「いいね」や「リツイート」をしておき、その履歴を追うことで投稿内容をいつでも確認できるようにするユーザーも存在します。
すなわち、「いいね」や「リツイート」は必ずしもその人にとって同意を表すものではないという見方もできるのです。
「いいね」や「リツイート」が誹謗中傷への賛同とみなされるケースも
SNSを活用するユーザーが爆発的に増えたことにより、本来の意味での「いいね」や「リツイート」だけでなく、自分にとって使いやすいよう工夫するユーザーも現れるようになりました。しかし、これこそが大きな落とし穴になることもあります。
たとえば、第三者のことを攻撃するツイートがあった場合、その原因が気になりツイートをさかのぼって閲覧することがあるでしょう。ところが、出勤途中や仕事の休憩中など、じっくりとSNSを見る時間がないときは、備忘録をかねて「いいね」を押したり「リツイート」したりすることもあるかもしれません。しかし、このような行動が、自分の意図には関係なく結果的に誹謗中傷ツイートの拡散を手助けしてしまうことになり得るのです。
「自分自身では誹謗中傷に加担するつもりはなかった」としても、「いいね」や「リツイート」が悪意のもとで行われたのかどうかを証明することは困難です。政府広報オンラインでも、再投稿(リツイート)をすることで名誉毀損罪や侮辱罪に問われ、高額の慰謝料が請求されることがあると紹介しています。慎重な判断のもとでSNSを利用することが求められています。
また、実際にユーザー自身が誹謗中傷のツイートをしていないにもかかわらず、「いいね」や「リツイート」をしたことが賛同と捉えられ、慰謝料の支払いを求める判決が下された例もあります。
- 政府広報オンライン
SNSの誹謗中傷 あなたが奪うもの、失うもの
誤解されないSNSの正しい使い方
SNSの活用方法は多様化しており、それとともに使い方次第で誤解を招くおそれもあります。では、このように意図せず誹謗中傷へ加担しないようにするためには、どういった点に注意してSNSを利用すれば良いのでしょうか。
最も大事なことは、第三者を攻撃するツイートには一切反応せず、無視をすることです。何があったのか興味が湧くこともあるかもしれませんが、そのようなツイートに少しでも反応するとトラブルに巻き込まれる可能性も出てきます。
また、誹謗中傷のツイートに反応することで多くのユーザーへ拡散する一助となり、最悪の場合は間接的に被害者を自殺に追い込むことにもなるでしょう。興味本位で他者のトラブルに首を突っ込むことを避けることで、自分自身の精神も安定しSNSを有効に活用できるはずです。
誹謗中傷の被害を受けたら専門の窓口や業者へ相談を
誹謗中傷が社会問題化していることもあり、政府や各団体では中傷被害を受けた人のための相談窓口を開設しています。厚生労働省の「まもろうよ こころ」や法務省の「インターネット人権相談受付窓口」、インターネット違法・有害情報相談センターなど、複数の窓口があるため、電話やチャット、メールなど利用しやすい方法で相談してみましょう。
また、書き込まれた情報を一刻も早く削除することも重要です。これ以上の被害を拡大させないためにも、インターネット上の誹謗中傷や風評被害対策専門の業者へ相談することも有効です。
問い合わせ窓口
厚生労働省「まもろうよ こころ」 | https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/ |
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法務省「インターネット人権相談受付窓口」 | https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken113.html |
今回は、SNSは使い方次第で加害者になってしまう恐れがあることをご紹介しました。具体的にどういった使い方をした場合に誹謗中傷へ加担となるのか、それを防ぐために注意すべきポイントは何かについても解説しました。「フェイクニュースに巻き込まれないために重要な心がけとは?被害者になった場合の対処法も解説」ではフェイクニュースの加害者にならないための心がけと、被害者となってしまった場合の対処法について解説しました。是非ご覧ください。