インターネットに個人情報や顔写真、勤務先などを本人の許可なく第三者が掲載する「晒し行為」。SNSやインターネット掲示板が発達した現在、晒し行為は大きな社会問題にもなっています。第三者からの恨みをかってしまい、自分自身が晒し行為の被害に遭う可能性もあることから、正しい知識を身につけておくことが重要といえるでしょう。
そこで今回は、インターネットの晒し行為は法律的にどのような問題があるのか、もし晒し行為の被害に遭った場合の正しい対処法も含めて解説します。
晒し行為とは
インターネットにおける晒し行為とは、ある特定の人物の顔写真や本名、住所、勤務先、電話番号などの個人情報を、不特定多数が閲覧できるインターネット掲示板やSNS、個人が運営しているブログなどに書き込む行為を指します。
晒し行為が行われる理由や動機はさまざまですが、当該人物に対して何らかの恨みを抱いているケースがほとんどです。過去にその人から酷い侮辱を受けたり、暴力行為を受けたため、その報復として行われる場合もあれば、事件や事故などの加害者に対して社会的制裁を与えるために、歪んだ正義感から晒し行為に走る人も少なくありません。
特にインターネット掲示板やSNSなどは匿名で投稿しているユーザーが多く、投稿者の身元を隠したまま第三者を晒すことができます。晒し行為の被害に遭った本人にとっては、いたずら電話や自宅への訪問、さらには勤務先にもさまざまな迷惑がかかることもあります。このため、対象者に精神的な苦痛を与える意味でも、晒し行為は間接的に攻撃できる方法といえるのです。
晒し行為はプライバシーの侵害にあたる
どのような理由があるにせよ、対象者に強い恨みを抱いていたからといって個人情報を公にする晒し行為は、法律上さまざまな問題をはらむ可能性があります。たとえば、日本では憲法によって基本的人権が保障されていますが、そのなかにはプライバシー権とよばれる権利もあります。
本人の許可を得ないまま個人情報をインターネット上で公開する晒し行為は、プライバシー権の侵害にあたるため決して許されるものではありません。また、ここで注意しておきたいのは、公にした情報が事実でない場合もプライバシー権の侵害にあたる可能性があるということです。
たとえば、「タレント◯◯には逮捕歴があった」という内容をインターネット上に公開した場合、本人やその家族、関係者でもない限りは事実を把握することが難しいものです。しかし、このような内容を見たとき、多くの方はそれが事実であると誤認してしまう可能性があります。そのため、軽いイタズラ心で発信した内容が、晒し行為に該当しているケースも十分考えられるのです。
内容によっては名誉毀損や侮辱罪に問われる可能性も
上記で紹介したプライバシー権は基本的人権のひとつとして保障されているものの、これを侵した場合の刑事罰は法律上規定されていません。しかし、晒し行為の内容によっては、名誉毀損や侮辱罪に問われる可能性もあるのです。
たとえば、例に挙げた「タレント◯◯には逮捕歴があった」という内容は、本人にかかわる情報のなかでも極めてセンシティブな内容です。これが事実でなかった場合、当事者に対して誤ったマイナスのイメージを植え付ける可能性があることから、名誉毀損に問われるでしょう。
また、そのような風評が広まることで世間からのイメージが損なわれ、CMやテレビ番組、映画、舞台などの降板を強いられることも考えられます。これによって受けた経済的な損失の補償が求められることもあり、晒し行為は刑事・民事ともに大きな責任が問われるリスクがあるのです。
晒し行為の被害に遭った場合の対処法
もし、インターネット上に自分自身に関する情報が公開され、晒し行為の被害に遭った場合、どのような対処をすべきなのでしょうか。正しい対処法を3つのステップに分けて紹介します。
削除依頼
晒し行為を発見したら、まずはサイトの運営者に対して削除依頼を出すことが重要です。たとえば、SNSであれば個別の投稿に対して運営側への報告が可能です。ツイッターの場合、「ツイートを報告する」から「嫌がらせを受けている、または暴力によって脅迫されている」という項目を選択すると、「私の個人情報を投稿している」や「私の画像や似顔絵を許可なく共有している」、「私の個人情報をさらしたりハッキングしたりすると脅迫している」などの項目を選択・報告できます。
運営会社によっても投稿の削除基準は異なりますが、まずは晒し行為による被害を受けていると報告を上げることが重要です。また、晒し行為を発見した場合、その後法的手段によって訴える際の証拠とするために、対象の投稿をスクリーンショットなどで保存しておくことも忘れないようにしましょう。
発信者情報開示請求により本人を特定
次に、法的措置を検討している場合には、発信している人物を特定する必要があります。そもそも日本の法律では、誰に被害を受けたのかを明確にしなければ裁判所に訴えることはできません。刑事事件の場合は警察が捜査をしてくれますが、損害賠償や慰謝料などを求める民事の場合には、法的手続きを経て本人を特定しなければならないのです。これには法律的な専門知識が不可欠のため、多くの場合は弁護士に依頼するケースが一般的です。
裁判所への提訴
本人が特定できたら、必要書類を揃えたうえで裁判所へ提訴します。こちらの手続きも法的な専門知識が必要になるため、弁護士に依頼するのが基本となります。また、本人を特定する「発信者情報開示請求」の手続きも裁判所を通して行うことになるため、一連の手続きをまとめて弁護士に相談してみるのがおすすめです。
- 対象の投稿をスクリーンショットなどで保存
- サイト運営者へ報告と削除依頼
- 発信者情報開示請求
- 発信者を特定
- 裁判で提訴
※3~5は法的な専門知識が必要
晒し行為にお悩みの場合は専門業者へ相談を
晒し行為は個人情報が公にされ、さまざまな被害を受けるおそれがあることから、発見した場合は直ちに対処することが重要です。しかし、法的な知識がなかったり、頼れる弁護士がいなかったりすると相談を躊躇してしまうケースも少なくありません。
もし、晒し行為に悩みを抱えている方は、インターネットの風評被害や誹謗中傷対策を専門に扱っている事業者へ相談してみることをおすすめします。法的手段に訴える場合でも、専門業者を通して弁護士を紹介してもらえることもあるため安心です。
今回は、ネットの「晒し行為」は犯罪になるのかどうか、そして被害に遭った場合の正しい対処法などについて解説しました。「誹謗中傷対策にスクリーンショットが有効な理由とは?相談先も紹介」では実際に誹謗中傷された場合、なぜスクリーンショットが有効なのか、また被害内容ごとの対処法についても詳しく説明しています。是非ご覧ください。