SNSによって誰もが手軽に情報を発信できるようになり、さまざまな価値観や考え方をもった人と交流したり、意見を参考にしたりできるようになりました。学校や職場の友人や知人、家族など、実生活では知り合うことのない貴重な経験をもつ人の考えに触れることができるのは、まさにインターネットがもたらしたコミュニケーションの変革といえるでしょう。
しかし、SNSは必ずしもそのようなメリットばかりではなく、ときには誹謗中傷によって第三者を傷つけてしまうこともあります。そのような場合、被害を受けた人はどう対処すべきなのでしょうか。
そもそも誹謗中傷とは
新型コロナウイルスの感染拡大などによる社会不安から、誹謗中傷が大きな社会問題となっています。ニュースでもたびたび目にするようになった誹謗中傷という言葉ですが、そもそも何が該当するのかよく分かっていないケースも少なくありません。
誹謗中傷の「誹謗」とは、自分自身以外の誰かの悪口を言ったりネガティブな言動をとったりすることを指し、「中傷」とは事実とは異なる内容を流布して他人の名誉を傷つけることを指します。すなわち、一般的な悪口や事実無根の風評などは誹謗中傷にあたることになります。
インターネットが登場する以前は、職場や学校、近所など限られたコミュニティのなかで伝わっていたものが、SNSの普及によって多くのユーザーに拡散し「炎上」に発展する事例も少なくありません。SNSでの拡散スピードはすさまじく、軽い気持ちで書き込んだつもりが1日もしないうちに数万、数十万の「いいね」や「リツイート」におよぶこともあります。
誹謗中傷によって受けるダメージの大きさは個人によって異なる
自分自身にとってネガティブな出来事が起きたとき、精神的に受けるダメージの大きさは個人によって異なります。たとえばSNSで名前も顔も知らない第三者から人格を否定されるような発言をされたとき、受け流したり無視をしたりして後に引きずらない人もいます。一方、突然暴言を投げかけられたことにショックを受け、数日間立ち直れなかったり、それがきっかけでSNSをやめてしまったりする人もいるでしょう。
また、はじめのうちは受け流して忘れたつもりだったのに、後になってから投げかけられた暴言を思い出し、落ち込んだりネガティブな気持ちになったりする人も少なくありません。
これを被害者の視点ではなく、加害者の視点で考えると大きな問題が見えてきます。たとえば、「この程度の言葉で傷つく人はいないだろう」「みんな書き込んでいる言葉だし大丈夫だろう」などと考え、個人のアカウントにリプライやダイレクトメッセージなどを送る人もいます。一方、「この言葉づかいは相手に対して失礼だ」「誤解されるかもしれない」と慎重に言葉を選ぶ人もいるでしょう。
誹謗中傷を防ぐためには、相手がどう感じるかをつねに考えることが何よりも重要です。仮に「自分はこの程度の言葉では傷つかない」と感じていても、相手によっては大きなショックを受けることも考えられます。
誹謗中傷を受けた場合の対処方法
では、自分自身が見知らぬ人からSNSで誹謗中傷を受けた場合、どう対処すれば良いのでしょうか。一口に誹謗中傷といってもさまざまな程度があり、状況に応じて適切に判断しなければなりません。今回は、4つのパターンに分類したうえで紹介します。
悩みや不安を相談したい場合
厚生労働省ではネット上における誹謗中傷が社会問題化していることを受け、誹謗中傷の被害を受けた人に向けた相談窓口を開設しています。たとえば、初めてSNSで誹謗中傷を受け、悩みや不安を抱えている場合には「まもろうよ こころ」という特設サイトから、電話やSNSなどさまざまな方法で相談ができます。
なかには、悩みや不安の種がSNSでの誹謗中傷だけでなく、さまざまな要因が重なっているケースもあるでしょう。そのような場合でも、厚生労働省が開設している窓口では精神的に不安を抱えているあらゆる人の相談にのってくれます。
仮に、悩みや不安の根本原因がすぐに解決できなかったとしても、誰かに話を聞いてもらうだけで心が落ち着くことも多いものです。相談できる相手が誰もいない場合や、知人や友人に相談しにくい場合でも頼りになる窓口です。
問い合わせ窓口
まもろうよ こころ | https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/ |
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名誉毀損にあたる場合
自分では身に覚えのない事実無根の内容が流布され、名誉が傷つけられている場合には、名誉毀損にあたる内容について、SNSへ書き込んだ人に対し賠償などを求めることができます。仮に加害者のアカウントが匿名であったり、すでに当該ツイートやアカウントそのものが削除されていたとしても、所定の手続きを経ることで個人の特定も可能です。
この場合、法的な専門知識が不可欠のため、誹謗中傷問題に強い弁護士または法テラスへ相談しましょう。
脅迫・強要を受けている場合
誹謗中傷がエスカレートすると、過去にSNSへ投稿されたわずかな手がかりから個人が特定され、実際に自宅まで見知らぬ人が訪問してくるケースもあります。なかには自分自身や家族にまで危害を及ぼすような脅迫めいたメッセージが届く場合もあり、身の危険を感じることもあるでしょう。
このように、何らかの危害がおよぶ危険性がある場合には、できるだけ早めに最寄りの警察署やサイバー犯罪相談窓口へ相談しましょう。「まさか本当に危害をおよぼすことはないだろう」と考えていても、エスカレートした加害者が実際に行動に移す可能性も否定できません。
どう解決すれば良いか分からない場合
「これは誹謗中傷にあたらないのではないか」または「相談できる弁護士がいない」、「警察では動いてくれなかった」など、解決したいと考えているもののうまくいかないこともあります。そのような場合には、誹謗中傷や風評被害対策などを専門に扱っている業者へ相談してみるのもひとつの方法です。
たとえば、SNSで誹謗中傷を投稿している本人に対し、第三者から削除依頼をすることで解決するケースもあります。
誹謗中傷を受けた場合はできるだけ早めに対処を
誹謗中傷を放置しておくと、徐々に多くのSNSユーザーへ拡散され、やがて収拾がつかなくなるほど炎上するケースも少なくありません。「事実無根の内容だし気にする必要はない」と考えていても、必ずしも誤解が解けるとは限らず、誤った認識のまま悪評として広がってしまうこともあるのです。
被害を広げないためにも、誹謗中傷を受けた場合にはできるだけ早めに対処し、炎上にいたる前の段階で適切に処理しておくようにしましょう。