ドラマや映画といったエンタメ分野をはじめとして、製品の設計など幅広い用途に活用されるCG技術。かつてのCG技術といえば、ひと目見ただけでそれがCGによって作られたと認識できるものが殆どでしたが、現在は技術の進化によって精巧化しています。
なかでも、近年耳にする機会が増えてきた「ディープフェイク」は、従来のCG画像、CG映像とは比べものにならないほどの品質を実現しています。しかし、これは良いことばかりとは限らず、ディープフェイクが悪用されさまざまなトラブルに発展することも考えられているのです。
そこで今回は、ディープフェイクとは何か、ディープフェイクの問題点を紹介するとともに、もしディープフェイクが悪用され思わぬトラブルに巻き込まれてしまった場合の対処方法も解説します。
ディープフェイクとは
ディープフェイクとはCG技術の一種で、人物や風景、動物など、あらゆる画像を合成したり、新たに作り上げたりするものです。また、画像や映像だけでなく、音声も自由に合成できるのもディープフェイクの大きな特徴です。たとえば、「Aさんの身体にBさんの顔を組み合わせ、Cさんの声を出す」といったことも表現できます。
従来のCG技術でもこのような表現は可能でしたが、ディープフェイクの特徴はその完成度の高さにあります。自然な表情、声などをつくり上げることができ、一見するとそれが合成映像なのか本物なのかが判別できないほどです。これほどまでに高度なCG技術であるディープフェイクが実現できるようになった背景には、AIによるディープラーニングの存在があります。従来のCG技術は、人の作業によって細かい部分の調整が必要であり、映像をつくるためには膨大な手間と時間を要していました。そのため、完成度の高いCG映像をつくるのは決して簡単なことではなく、高価な機材やソフトウェアも不可欠だったのです。
しかし、十分な量のデータからコンピュータが自ら特徴を割り出すディープラーニングを活用することで、従来よりも圧倒的に短時間で手軽にCG画像やCG映像を作成できるようになりました。
手軽に作成できるディープフェイク
画像や映像を合成するとなると、専門知識やスキルが必要なのでは?と考える方も多いことでしょう。しかし、ディープフェイクを作成するためには必ずしも専門知識やスキル、高価な機材が必要とは限らず、スマートフォンやタブレットでも簡単に実行できます。
たとえば、「Xpression」や「iface」というスマートフォンアプリは、入れ替えたい人物の画像や動画さえあれば簡単にディープフェイク動画を作成できます。また、PC用のアプリケーションでは「DeepFaceLab」、「DeepFakeWebベータ版」などもあり、これらも高度な専門知識は不要です。
また、インターネット上にはディープフェイクのつくり方を紹介するWebサイトも多数存在することから、知識がゼロの状態からでも完成度の高いディープフェイク動画をつくり出すことは十分可能なのです。このように、ディープフェイクはもはや一般的なものになりつつあり、スマートフォンやPCさえあれば時間もコストもかけることなく、誰でも自由に作成できる環境にあるといえるでしょう。
ディープフェイクの問題点
本来、ディープフェイクは映画やドラマの制作などエンタメ分野での活用を想定して開発されたもので、実際に高度なディープフェイクを活用した作品も少なくありません。しかし、本来の用途から逸脱しディープフェイクが悪用されるケースも相次いでおり、フェイク画像やフェイク動画が発端となってさまざまなトラブルに発展するおそれもあるのです。
たとえば、外国の国家元首や著名人、大手企業の経営者などの映像をディープフェイクによって加工し、本人が発言していない内容をSNSや動画サイトにアップロードするといった事例も実際に存在します。極めて完成度が高く、一見すると合成映像とは判断することが難しいため、誤った情報がSNSで拡散することも十分考えられるでしょう。
ディープフェイクは、本来の正しい使い方をすれば映画やドラマの撮影・制作を効率化できる素晴らしい技術ですが、本来の用途ではない誤った方向に悪用されるケースが相次いでいます。その結果、ディープフェイクに対してネガティブな印象が根付きつつあるのが現状です。
- 制作コストの低さ
知識・人手・資金が不要、誰でも低コストで完成度の高い映像が作れる。 - 拡散の早さ
SNSや動画サイトにアップするだけで瞬時に世界へ拡散される。
ディープフェイクが発端となりトラブルに発展したら
スマートフォンやPCさえあれば、誰もが手軽にディープフェイクを扱えるようになっていることから、自分自身の顔が映ったフェイク画像やフェイク動画が発端となってトラブルに発展することも十分考えられます。たとえば、掲示板やブログ、動画サイトにアップロードされ炎上騒ぎにまで発展した場合など、どう対処すれば良いのでしょうか。
まずは「これはフェイク画像、フェイク動画であること」をはっきりと示し、自分自身が撮影されたものではないものであると説明することが重要です。そのうえで、もしアップロードした人が分かっている場合には削除と訂正を求めましょう。
自分自身で対処することが難しい、または正しい情報を発信しているのに炎上が収束する気配がない場合には、ネット上の風評被害・誹謗中傷を専門に扱う業者に相談してみるのもおすすめです。法的手段が必要な場合には弁護士と連携しながら対処してくれるほか、ネット上に拡散した情報の削除依頼やネガティブワードを検索候補から除外する逆SEO対策なども可能です。
今回はディープフェイクが発端で炎上騒ぎに発展した場合や、トラブルに巻き込まれた場合の対処法をご紹介しました。「フェイクニュースが及ぼす影響とは?当事者になってしまったときの正しい対処方法」では、なぜフェイクニュースは拡散されやすいのか、フェイクニュースの当事者になってしまった場合はどのように対処すれば良いかなどを中心に詳しく解説します