インターネットで個人が手軽に情報発信できるようになった昨今、「デジタルストーキング」とよばれる新たな言葉も登場しています。ストーカーといえば、個人の行動に合わせて物理的に後をつけ回すことを指す場合が多いですが、インターネット上に発信した情報を手がかりに、自宅を特定したり自分自身の居場所を突き止めたりすることをデジタルストーキングとよびます。
しかし、「住所や居場所を記載した覚えがないのに、なぜ特定されるのか?」と疑問を抱く方も多いです。そこで今回は、インターネットを利用するうえで注意しておきたいプライバシーの守り方や、自宅や居場所を特定されないためのポイントも合わせて解説します。
インターネットでは些細なトラブルが重大な事件に発展することも
ブログやSNSなど、個人が情報発信できるツールはさまざまなものがあり、日々多くのユーザーがさまざまな投稿をしています。インターネットは正しく活用すれば有益な情報を得られたり、個人同士が交流できたりといったメリットがある一方で、直接顔を合わせてコミュニケーションをしない分、些細な行き違いが重大なトラブルに発展することも少なくありません。
ブログにしろSNSにしろ、本名で情報発信している人は限定的であり、多くのユーザーは匿名で投稿しています。また、人間同士のコミュニケーションにおいて文字だけで伝えられる情報量は限られています。例えば対面であれば、言葉だけでなく表情や声のトーン、細かい仕草などから言葉以外のニュアンスを伝えることができます。
しかし文字だけで伝える場面では、細かいニュアンスは伝わらず、本人は相手を気遣って文章を作ったつもりでも、「バカにされた」、「神経を逆撫でするような言葉を投げかけられた」と相手の誤解を招くこともあるでしょう。
文字だけのやりとりでは、些細な行き違いから個人同士の争いに発展するケースもあるのです。そして、なかにはインターネット上での執拗な嫌がらせをしたり、それだけでは飽き足らず相手の自宅を特定し、さまざまな行動に移すパターンもあります。
自宅や居場所が特定される原因とは
インターネット上での嫌がらせがエスカレートしたとき以外にも、昨今では当事者ではない第三者からの誹謗中傷も社会問題化しています。執拗に嫌がらせを繰り返す人には、とにかく「相手を困らせてやりたい」といった心理があり、相手のことをよく観察しています。そして、過去から現在に至るまでインターネット上に発信した情報を手がかりに、自宅や居場所を特定しようとします。
では、具体的にどのような情報が原因で自宅や居場所の特定につながるのでしょうか。いくつかの例をもとに解説しましょう。
集合住宅内の画像
集合住宅内で撮影した画像から建物や自宅を特定されることがあります。アパートやマンションなどの集合住宅は、複数の部屋が共通の間取りとなっているケースが多いので住宅内の画像が手掛かりになります。特に、特徴的な間取りや内装の部屋は、その特徴から自宅が特定されることもあります。
例えば、最近では不動産会社がアパートやマンションの物件情報をインターネット上で公開しており、そのなかには間取りや内装の画像も含まれています。過去にその集合住宅に居住したことがない人であっても、インターネット上から住宅に関する情報と画像の間取りや内装を照らし合わせ特定に至ることもあるのです。
自宅のベランダから撮影した画像
住宅内の画像だけではなく、窓やベランダから見える景色も自宅の特定につながることがあります。たとえば、川や海岸、ビル、お店の看板、道路標識など複数の情報を手がかりに、ある程度の居住地は絞り込むことも可能です。そして、それらの情報を手がかりにGoogleマップのストリートビューなどを活用すれば、条件に合致する住所を細かく特定できてしまうのです。
なお、タワーマンションのベランダから撮影した場合においても、ランドマークとなる高い建物や山、川などの位置から方角を推測すれば、条件に合致するタワーマンションを特定するのは決して難しくありません。
カレンダーやレジ袋
部屋全体を撮影した画像でなくても、一部にカレンダーやレジ袋などが写り込んで自宅の場所が特定されるケースもあります。
たとえばカレンダーの場合、粗品として進呈した企業やお店の情報が下部に記載されていることもあります。また、レジ袋にもお店のロゴや名前が記載されていることが多く、生活圏内にそれらのお店があるということが容易に推察できてしまうのです。
飲食店のメニュー
料理の画像だけでお店の情報が特定されるケースもあります。最近ではグルメサイトにさまざまな飲食店の情報が掲載されており、実際に提供されている料理の画像も豊富です。たとえ画像にお店の名前や場所が映っていなくても、またそのお店に足を運んだことがない人であっても、料理の画像とインターネット上の情報を照らし合わせお店を割り出すこともできてしまいます。
たとえば、SNSに「近所のお店でランチ」という旨の投稿をした場合、居住エリアが第三者に知られてしまう危険性があるのです。
その他個人が特定できるモノの映り込み
上記以外にも、本人ですら気付かないようなモノが画像内に写り込んでいるケースがあります。たとえば、部屋のなかを撮影したときに自分宛てに届いた手紙や封書が写り込んでしまっていたり、かかりつけの病院や歯科医院の診察券、コンビニやスーパーのレシートなどが写り込んでしまっていると、容易に自宅を特定されてしまいます。
- 集合住宅内の画像
間取り、内装が不動産会社の情報などと照合され、特定される - 自宅のベランダから撮影した画像
地理的な条件や看板、ランドマークがGoogleMAPなどの情報と照合され、特定される - カレンダーやレジ袋
記載してある店名やロゴから割り出される - 飲食店のメニュー
グルメサイトなどの画像と照合され、特定される - その他個人が特定できるモノ
レシートや診察券など小さな情報から特定される
デジタルストーキングの被害に遭わないために
デジタルストーキングの加害者は、本人も気付かないようなわずかな手がかりを糸口に自宅や居場所を特定しようと試みます。そのため、インターネット上に自身に関する画像を掲載する際には上記で例に挙げたポイントに注意しつつ、これ以外にも自分自身の特定につながる情報がないかを慎重に判断する必要があります。
そして、個人の特定につながる情報は自分自身で発信したものとは限らず、第三者が悪意をもってプライバシーを侵害する情報を拡散しているケースもあります。そのような場合、自分自身だけでは解決が難しいことも多いため、風評被害を専門に扱っている事業者へ相談することをおすすめします。
今回はだれでもデジタルストーキングの被害者になる可能性があることについてご紹介しました。その他、ネット社会ではSNS上の誹謗中傷も社会問題化しています。「SNSによる誹謗中傷を受けた場合の対処方法とは」では、実際どのような誹謗中傷があり、どのように対処すればよいかご紹介しています。是非合わせてご覧ください。